この記事について
本記事に広告・アフィリエイトリンクは含まれていません。当サイトは心理や医療の専門家ではありません。この記事は「どう伝えるべきか」を助言するものではなく、研究や専門機関が何を報告しているかを紹介するものです。
情報の確認日
2026年9月11日
ペットが亡くなったことを、子どもにどう伝えればいいのか。
検索すると「年齢別・正しい伝え方」という記事がいくつも出てきます。「眠っていると言ってはいけない」「遠くへ行ったと言わない」。そうした助言に、どんな根拠があるのかを調べました。
調べて分かったこと
よく見る助言の多くは、専門機関がそう述べているというものでした。実証研究による裏づけは、確認できませんでした。
年齢による死の理解の違いは、日本の研究があります。3歳から13歳の205名を調べたものです。
日本には、学校で飼っていた動物が死んだときについての公式な記述があります。日本獣医師会のものです。
この記事は「こう伝えましょう」とは書きません。判断できるのはご家族と、必要であれば専門家です。書けるのは、何が報告されていて、何が分かっていないかまでです。
「眠っている」と言わない、の根拠を探しました
この助言は非常によく見かけます。出どころを追いました。
英国のペット関連団体 Blue Cross が、飼い主向けの資料にこう書いています。
「子どもが理解できる言葉を使ってください。“dead”(死んだ)や “died” のような率直な言葉のほうが、”put to sleep”(眠らせる)より適切です。後者は、年少の子どもに混乱や不安を生じさせることがあります」
「状況については常に正直に。実際には死んだのに「いなくなった」と装わないでください。」
Blue Cross の飼い主向け資料より(当サイトによる訳)
米国児童青年精神医学会も、ペットの死を子どもに伝えることについての資料を公開しており、曖昧な説明や不正確な説明で子どもを守ろうとすると、不安や混乱、不信を生むことがある、という趣旨を述べています。
ただし、どちらの資料にも出典が付いていません。専門職団体の見解として書かれたもので、研究結果の報告ではありません。
「眠っている」という言い換えが子どもに具体的な害を生じさせることを検証した研究は、今回の調査では見つけられませんでした。ペットの文脈でも、人の死別の文脈でもです。
つまり、こう言えます。「専門機関はそう述べている」。それ以上のことは、確認できませんでした。従うべきかどうかは、ご家族が決めることだと思います。
大学のサイトに見えて、そうでない資料がありました
調べる過程で、注意したい例に当たりました。
米国のある大学の獣医学部のサイトに、この話題のページがあります。大学のドメインにあるので、一見すると専門機関の見解に見えます。
ページ自体に、商業ペットメディアからの許諾転載であることが明記されていました。書いたのは、その媒体に寄稿した個人です。大学の見解ではありません。
当サイトは、この記述を使いません。同じ文言が「大学の見解」として引用されている可能性があります。
年齢による違いは、日本の研究があります
「何歳ならどこまで分かるのか」については、日本の子どもを対象にした実証研究がありました。
仲村照子「子どもの死の概念」(『発達心理学研究』5巻1号、1994年、61〜71頁)です。3歳から13歳までの男女205名に個別面接し、死に関する9つの質問に答えてもらった研究です。
「幼児期の子どもは大人がもつような死の意味とは違ったものとして理解している。生と死は未分化であり, 現実と非現実の死の区別がなされておらず, その子ども独自の自由な死の概念を形成していると思われる。そして自分は死なないと思っている。」
「児童期あたりから死の現実的意味である普遍性, 体の機能の停止, 非可逆性を理解するようになる。彼らは誰でもいつかは死ぬし, 死によって体の機能は停止するし, 再び生き返ることは出来ないことを理解する。」
「全年齢を通して変化のないものは死はいやな感じであるという感情であった。」
仲村照子(1994)抄録より
これはペットの死についての研究ではなく、死の概念そのものについての研究です。ペットに当てはめてよいかは、この論文からは分かりません。
ただ、幼い子どもにとって「死んだ」という言葉が大人と同じ意味を持っていない、という点は押さえておく価値があると思います。繰り返し同じことを聞かれても、それは理解していないのではなく、そういう時期だということかもしれません。
なお、米国児童青年精神医学会も年齢による段階を示しており、9歳頃までは死が最終的なものだと完全には理解しないとしています。日本の研究と独立に、同じ方向を示しています。
ただし、これを「年齢別の伝え方の表」にはしません。年齢は目安であって、その子がどう受け止めるかを決めるものではないからです。
日本には、学校で飼っていた動物についての記述があります
ここは日本固有の資料です。
日本獣医師会の学校飼育動物委員会が平成17年(2005年)にまとめた報告書に、次の記述があります。「当面の課題と対応の方向」の「日常の飼育管理」の項です。
「動物の死亡に当たっては、「死」が貴重な教材として活用されるよう、子どもたちの心情に配慮した処置が望まれる。」
日本獣医師会 学校飼育動物委員会報告(平成17年5月)より
同じ報告書には、「飼育・栽培を通して、生きていることの尊さや素晴らしさ、枯れたり死んだりしたときの悲しさや恐ろしさを体験することは児童の成長にとって大切である」という記述もあります。
ただし、具体的にどう伝えるかは書かれていません。「心情に配慮した処置が望まれる」という方針の表明までです。2005年の資料である点も、付け加えておきます。
文部科学省の側には、学校の動物飼育についての資料はありますが、飼育動物が死んだときに子どもへどう対応するかを扱った記述は見つけられませんでした。
ペットの死と子どもの心の状態を調べた研究
大規模な調査が1件ありました。ただし読み方に注意が要ります。
英国の出生コホート研究(ALSPAC)のデータを使った Crawford ら(2021年、『European Child & Adolescent Psychiatry』)です。対象は6,260名。7歳までのペットの死と、8歳時点の精神症状の関係を調べています。
報告されているのは次の2点です。
- ペットを飼っていて死別を経験した子どもは、飼っていて死別がなかった子どもより、精神症状の得点が高かった(他の逆境を調整したうえで)
- 一方で、死別を経験した子どもと、そもそもペットを飼っていなかった子どもとの間には、差がなかった
また、死別の時期や回数と症状の関係は見られなかった、としています。
これは「ペットを飼わないほうがよい」という意味ではありません。論文自身がタイトルに「愛して失うほうが、まったく愛さないよりよいのか」という問いを掲げており、2番目の結果はその問いへの答えになっています。
また、集団としての統計的な差であって、個々の子どもがどうなるかを予測するものではありません。当サイトが確認できたのは抄録までで、本文は有料のため読めていません。
分かっていないこと
正直に書いておきます。
- 言い換えの害を実証した研究は、見つけられませんでした
- 「すぐに新しいペットを迎えないほうがよい」「お別れをさせたほうがよい」「親が泣いてよい」。これらはいずれも専門機関の見解として書かれていますが、出典がありません
- 日本の子どもがペットの死をどう経験したかの実証研究は、見つけられませんでした。動物飼育と共感性の研究は複数ありますが、死別を扱ったものは確認できていません
- 子どものペットロスについての系統的レビューも、見つけられませんでした
つまり、「正しい伝え方」が研究で確立しているわけではありません。断定しているページを見かけても、その根拠まで確認されているとは限りません。
心配なときの相談先
お子さんの様子が気になるときは、当サイトの情報ではなく、実際にその子を見られる人に相談してください。
- 学校のスクールカウンセラー(在籍校を通じて相談できます)
- お住まいの自治体の子育て相談窓口・保健センター
- かかりつけの小児科
食事や睡眠、学校生活に変化が続いている場合は、早めに相談したほうが安心だと思います。これは当サイトが判断できることではありません。
よくある質問
「眠っているだけ」と言ってしまいました
それによって害が生じることを示した研究は、見つけられませんでした。専門機関が避けるよう述べているのは事実ですが、出典は示されていません。言ってしまったことを取り返しがつかないと考える必要はないと思います。伝え直したいと感じたときに、伝え直せば足りるのではないでしょうか。
火葬に立ち会わせてよいものでしょうか
当サイトは意見を持ちません。事業者13社の公式サイトを確認しましたが、子どもの同伴について書いていた事業者は1社もありませんでした。実務の面では、立会火葬は1時間から3時間台かかり、その多くが待ち時間になります。詳しくは立会火葬の当日、何を聞いておくかをご覧ください。
何歳から本当のことを話すべきですか
「何歳から」を定めた研究は見つけられませんでした。日本の研究(仲村1994)は、幼児期には生と死が未分化で、児童期あたりから死の不可逆性を理解するようになると報告しています。米国の専門機関も、9歳頃までは死が最終的なものだと完全には理解しないとしています。ただしこれは理解の発達についての報告であって、何を話すべきかを定めたものではありません。
同じことを何度も聞いてきます
米国児童青年精神医学会は、年少の子どもには説明を何度か繰り返す必要があるかもしれない、としています。日本の研究も、幼児期には現実と非現実の死の区別がなされていないと報告しています。理解していないのではなく、そういう時期である可能性があります。ただし、様子が気になる場合は上記の相談先へ。
学校で飼っていた動物が死にました
日本獣医師会の報告書は「『死』が貴重な教材として活用されるよう、子どもたちの心情に配慮した処置が望まれる」としています。ただし具体的な方法は書かれていません。文部科学省の資料にも該当する記述は見つけられませんでした。学校での対応は、担任の先生や学校に直接ご相談ください。
さいごに
この題材を調べ始めたとき、「年齢別の正しい伝え方」がどこかにあるはずだと思っていました。
ありませんでした。あるのは、専門機関の見解と、死の理解の発達についての研究と、まだ調べられていない広い余白です。
だとすれば、「正しく伝えられなかった」と自分を責める必要はないのだと思います。正解が確立していないことについて、間違えようがありません。
ひとつだけ、複数の資料に共通していたことがあります。子どもは、親が悲しんでいる姿を見て学ぶ、という趣旨の記述です。これも出典のない見解ですが、書いておきます。隠さなければならない、ということはなさそうです。
ご自身のつらさについては、ペットロスとの向き合い方|「5段階」は当てにしなくて大丈夫ですに書いています。ほかに飼っている子の様子が気になる場合は、もう1匹が元気ない|残された犬猫に報告されていることをご覧ください。
主な参考資料
- 仲村照子(1994)「子どもの死の概念」『発達心理学研究』5巻1号、61-71頁
- 日本獣医師会 学校飼育動物委員会報告「学校飼育動物活動の推進について」平成17年5月(PDF)
- Crawford KM ら(2021)European Child & Adolescent Psychiatry 30(10):1547-1558(抄録)
- American Academy of Child & Adolescent Psychiatry「Death of Pets: Talking to Children」
- Blue Cross「Pet loss support for children」
- 文部科学省「学校における動物飼育について」(PDF)
※確認日は2026年9月11日です。Crawford ら(2021)は抄録のみ確認しており、本文は未確認です。海外の資料は当サイトが訳しています。ブログ、まとめサイト、商業メディアの記述は根拠に使っていません。

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